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2023年、TAD(Technical Audio Devices)がEVOLUTIONシリーズの最高峰として世に送り出した「TAD-GE1(Grand Evolution One)」。
「正確な再生」と「聴く歓び」の融合を掲げる同機は、オーディオ誌などでもすでに大きな話題を呼んでいる。ソースのクオリティを忠実に描き出す圧倒的なレスポンスの高さ、楽器の質感や緻密な音像定位、そして「目の前で演奏が繰り広げられている」と錯覚するほどの臨場感――。その前評判は高まるばかりだ。
先のオーディオフェアでその音に触れた方も多いかもしれない。しかし、賑やかな会場特有の騒音の中では、本機が持つ真のポテンシャル、とりわけ微小信号が織りなす「繊細な表情」までを窺い知ることは難しかった。そこで今回、じっくりと腰を据えてヒアリングを行う機会を得たので、静寂の中で聴くGE1の真価をレポートしました。
●14cm CSTドライバー
トゥイーターには卓越した高域再生を誇る「蒸着ベリリウム振動板」、ミッドレンジには新開発の「マグネシウム振動板」を採用。優れた同軸特性により、点音源思想を高い次元で具現化しています。
●18cmウーファー(2基基載)
織布と不織布を5層にラミネートした強靭な振動板を採用。豊かでありながら正確でハイスピードな低域再生を可能にしています。
●「ISOドライブテクノロジー」と革新的なポート配置
エンクロージャーの底部にポートを配置し、前後に開口部をレイアウト。これによりポートノイズを徹底的に低減するとともに、内部定在波の漏洩を抑制し、濁りのないクリアな音場を実現しています。
●SACDプレーヤー:marantz/SACD10
●プリアンプ:Accuphase/C-2950
●パワーアンプ:Accuphase/A-80
■ 試聴を進める中で、以下の2点を整えて聴くことにより、再生音からの恩恵が極めて大きいスピーカーであると実感しました。
1)完璧な「正三角形」の頂点で聴く
本機は非常に指向性が高く、緻密にコントロールされています。そのため、左右のスピーカーとリスナーが正確な三角形を描き、その頂点(リスニングポイント)で聴くことで、初めて息をのむようなピンポイントの音像定位と、圧倒的なステージ感が目の前に現れます。
2)付属スパイクの装着は必須
床へのベタ置きは厳禁です。付属の三角ピン(スパイク)を設置することで、エンクロージャーと床面が適度にアイソレーションされ、音のバランスや音抜けの良さが向上します。本来のポテンシャルを発揮させるための必須条件と言えます。
音色はクールで、明確に音像を描き、躍動感と迫力に満ちた演奏を聴かせる。CDに刻まれた音楽情報を、一切の妥協なく正確に再生する。特筆すべきは、18cmウーファーのツイン駆動がもたらす低音の質である。極めて歯切れがよく、ビッグバンドジャズや大編成のオーケストラを、破格のスケール感で描き出していくが、単にダイナミックなだけではない。息をのむような深みと繊細な表現力を同時に内包している。
女性の声の繊細さ、まろやかさ、バイオリンの弦が擦れる生々しい気配、ピアノの艶やかな余韻。それらが精緻に再現されることで、曲の持つ哀愁やはかなさ、ライブハウスの優雅な雰囲気、そしてオーケストラ演奏会場の静けさや奥深さまでもが、空間を満たしていく。音楽に込められた作曲者の意図や情緒が、ダイレクトに伝わってくる。
面白いのは、ジャズが持つ独特の「泥臭さ」や「やさぐれた感情」までもが、切々と描かれる点だ。卓越したモニター調の素性を持ちながら、そこへ豊かな抒情性が絶妙に加わっている。この「TAD-GE1」は、オーディオ的な快感に身を委ねつつも、時にはちょっと肩の力を抜いて、音楽そのものを深く味わいたいと思わせる珠玉の音色を備えている。
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1)ヴォーカル:
手嶌葵 Aoi Worksより さよならの夏
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クールな歌声が中央に浮かび上がり、まるでライブ会場の最前列で聴いているかのような圧倒的な実存感。手嶌葵ならではの繊細な声のニュアンスには柔らかなまろやかさが帯び、楽曲が持つ哀愁とはかなさが伝わってくる。バックのピアノには見事な重量感があり全域でバランスが良い。会場の静けさと奥深さが醸し出される。音源(CD)の音質の差を明瞭に表してくる。
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2)ジャズ(ヴォーカル・コンボ):
Sinne Eeg Face The Musicより月光のいたずら
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イントロから圧倒的な躍動感と迫力が空間を満たし、文字通り体ごと音楽の渦へ引き込まれる。ヴォーカルの輪郭は極めて明瞭。ベースやピアノの音も重量感や迫力があり、ジャズ特有の「凄み」がダイレクトに響く。声や各楽器が空間へ立体的に浮かび上がる様が見事で、適度な硬質感が心地よい緊張感を演出。すべての音がストレスなくクリアに解き放たれる。定位が正確で、伴奏楽器の位置関係も手に取るように分かり、ジャズライブならではの優雅でゴージャスな雰囲気が生々しく伝わってくる。普段聴き慣れたシステムから「ベールがさらに一枚剥がれた」感じがする。
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3)ビッグバンド・ジャズ:
Manhattan Jazz Orchestra SING SING SINGよりSING SING SING
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ビッグバンドの生の迫力が迫って来て、ライブ演奏の中に引き込まれているような感覚がする。すべての音が驚異的なスピード感で立ち上がり、打楽器の強烈なアタック音はスリリングで刺激的。その一方で、木管楽器の繊細で柔らかい質感も驚くほど生々しく描き分ける。緻密さと豪快さを併せ持つスイング感に思わず身体が動き出し、音がダイレクトに肉体へと響く快感を味わえる。
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4)クラシック(室内楽):
Beethoven:The Violin Sonatas Sonatas5
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バイオリンの音も、ピアノの音も生々しく、演奏者の卓越した技量と気迫が伝わってくる。非常に勢いとエネルギーのある鳴り方でありながら、まろやかさも同時に表現。クラシック音楽が持つ厳かな尊厳性を損なうことなく、上品で味わい深い演奏として聴かせる。スケール感が大きく、ヴァイオリンとピアノの立ち位置、両者の距離感、奥行きが明瞭である。
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5)クラシック(管弦楽):
Mussorgsky 展覧会の絵 よりプロムナード、こびと
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各楽器の分離が極めて秀逸。絵画をモチーフにしたこの楽曲特有の凄み、迫力、そして色彩豊かな鮮やかさが目の前に構築され、演奏会場の生々しい雰囲気が伝わってくる。音が伸びやかで、オーケストラの急激な大編成の変化にも俊敏に追従する。GE1の「反応性の高さ(レスポンス)」が遺憾なく発揮された、見事なクラシック表現だ。
今宵は、ショスタコーヴィチの「祝典序曲 作品96」を聴きます。本作はロシア革命37周年を記念して作られた作品で、幕開けとともに炸裂する金管楽器の目の覚めるようなファンファーレ。そこから一気に引き込まれるダイナミックで圧倒的なスケールの演奏に、じっくりと浸りたいと思います。
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