2026年6月(1)試聴レポート

PIEGA Coax 811 試聴レポート

試聴レポート~お客様より~2026年6月(1)

PIEGA Coax 811

PIEGA(ピエガ)は、スイス・チューリッヒ湖の湖畔に本拠を置くスピーカーメーカーである。美しい湖とアルプスの山々に囲まれたその風光明媚な環境は、訪れる者の心を奪う。そんな息をのむような大自然の中から生まれたPIEGAが、2023年にリリースしたのが「COAX 811」だ。本機は発売以来、オーディオ誌の高価格帯スピーカー部門において、多くの評論家から高い支持を集め続けている。

そのサウンドの特徴は、「さわやかな温かさ」と評される中高域の高い解像度と、開放的で聴き応えのある低域にあり、全帯域にわたって極めて自然な音のつながりを見せる。先日のオーディオフェア会場では、周囲の騒音もありその真価を計り知ることができなかったため、今回は輸入代理店であるフューレンコーディネートの協力を得て、AV BOXの試聴室にてじっくりとヒアリングを試みた。

Coax 811を形作る4つの技術的特徴

●最高峰の同軸リボンユニット「C212+」
COAX 811にのみ搭載される、シリーズ最大サイズの同軸リボンユニット。ミッドレンジ部の振動膜(ダイアフラム)裏側にダンプ材を追加し、独自の特殊コーティングを施すことで不要共振を徹底排除。さらにトゥイーター部の前面に配置された棒状のネオジム磁石が、圧倒的な駆動力を生み出している。

●強靭なアルミ製ウーファーセクション
低域には、22cmの「UHQDウーファー」を2基、さらに同サイズの「UHQDパッシブラジエーター」を2基搭載。高剛性なアルミニウム素材を採用した計4基の強靭なユニットが、開放的でスピード感のある超低域を支える。

●筐体の鳴きを制御する「TIM」構造
押し出しアルミのエンクロージャー内部には、精巧なテンション(張力)コントロールを可能にする新開発の「TIM(Tension Improve Module)」を配置。ネジを切った頑強なロッドで内部から適正な圧力をかけることで、キャビネットの微細な振動を完全に抑制している。

●500Hzのクロスオーバーがもたらす音離れの良さ
驚異的な高効率を誇る同軸リボンに合わせ、これに相応しいバランスの良い低域を作るため、ウーファーとのクロスオーバー周波数を他のモデル(450Hz)よりも高い「500Hz」に設定。これにより中域の厚みが劇的に向上し、極めてスムーズな音離れの良さを実現した。

PIEGA Coax 811 試聴

リファレンス機器

●SACDプレーヤー:marantz/SACD10
●プリアンプ:Accuphase/C-2950
●パワーアンプ:Accuphase/A-80

音の印象:

全帯域が一体となる「フルレンジ」の理想郷と、音楽の魔力

試聴室で音が出た瞬間、まず圧倒されるのは、同軸リボンユニットが描き出す音像の繊細な質感と、ウーファーおよびパッシブラジエーターが一体となって生み出す、圧倒的な厚みと実存感である。中高域と低域の繋がりは極めてスムーズで、これほど大型のシステムでありながら、まるで優れた「フルレンジスピーカー」を聴いているかのような一体感に満ちている。

計4基の22cmユニットが送り出す低音は、ハイスピードでありながら豊かな抱擁力を湛える。ピアノやベースには確かな重量感を与え、ビッグバンドの強音も破綻なくダイナミックに再現。さらに、オーケストラが演奏されるホールの静寂感や、ステージの深遠な奥行きまでも見事に描き出してみせる。

音質は暖かく繊細で、人肌の温もりを感じる女性の声や、バイオリンの弦が擦れるリアルなニュアンス、ピアノの艶やかな表情は、聴く者を瞬時に魅了し、音楽の深淵へと引きずり込むような魔力を秘めている。

消え入るような音から、ドラムの重量感あふれる一撃まで、ストレスなく完璧に追従。歌手や演奏者の卓越した技量を余すところなく引き出すその鳴りっぷりは、まさに生演奏のライブ会場に身を置いているかのような錯覚さえ覚える。

音楽の、そしてクラシックの深遠なる世界を心ゆくまで味わい尽くす。間違いなく「最右翼」に位置するスピーカーではないか、と思う。


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ジャンル別試聴

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1)手嶌葵 Aoi Worksより さよならの夏
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ライブ会場の雰囲気が静かで奥深く、手嶌が、あたかも目の前で歌っているように演出される。その声はあくまで自然で、微に入り細に入り表現される。伴奏のピアノは確かな重量感を伴い、ボーカルを包み込むように自然な音場で展開される。

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2)Sinne Eeg Face The Musicより月光のいたずら
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音場の中央に定位するボーカルには心地よい体温が感じられ、伴奏楽器とのバランスも秀逸。ベースの低音は弾力ある重量感を持ち、ジャズらしい躍動感や切れの良さを過不足なく表現する。そのリアリティは、まるでライブハウスの最前列でステージを見上げているかのようだ。音の厚みと微細なディテールが見事に両立しており、新世代同軸リボンが持つ圧倒的な情報量が伝わってくる。すべての音にゆとりがあり、ピークでも天井感を感じさせず、どこまでも伸びやかに突き抜けていく。

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3)Manhattan Jazz Orchestra SING SING SINGよりSING SING SING
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低音に、豊かな量感と迫力があって、ライブ会場にいるような臨場感がある。木管楽器の質感には深みがあり、演奏者の息遣いまで聴き取れそうなほどだ。ビッグバンドの個々の楽器の分離が良く、そこに宿る躍動感も決して作ったものではなく、自然に体感しているような雰囲気である。

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4)Beethoven:The Violin Sonatas Sonatas5
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バイオリンの高域は少し、煌びやかな輝きを放っているように思う。一方でピアノの響きには艶やかな美しさと深い重量感があり、静寂で奥行きのある演奏会場で聴いているような贅沢な錯覚を覚えるが、音楽の旋律を味わうと言うより、生演奏の迫力を味わっている感じがする。クラシック演奏の生の迫力が伝わってくる

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5)Mussorgsky 展覧会の絵 よりプロムナード、こびと
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大編成のオーケストラでありながら、個々の楽器が混ざり合うことなく、見事な立体感をもって再現される。展覧会の絵画をモチーフとした本作の重厚な世界観と、演奏者の高度な技量が如実に伝わってくる生々しさだ。そこにあるのは、現実のコンサートホールで味わう生のオーケストラそのもの。今まで感じたことのない、底知れない音の奥深さと落ち着き(気品)を感じさせてくれた。

TODAY’SONG

今宵は、ジェニー・スミス(Jennie Smith)のアルバム「Love Among The Young(ラヴ・アマング・ザ・ヤング)」を聴きます。彼女の清楚で可憐な歌声が、ちょっと大人びてきた艶やかな時期を切り取った極上のLPです。そこから溢れるサウンドは、どこまでも爽やかで、どこか温かい。その絶妙なニュアンスは、なぜだかPIEGAの描く音の世界観にぴったりと重なります。

Love Among The Young ジャケット Love Among The Young レコード盤

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