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Accuphase(アキュフェーズ)のAB級プリメインアンプのラインアップには、これまでE-4000やE-5000があったが、この度フラッグシップモデルとして「E-6000」が追加された。新製品が登場する度にパワーと静寂性が増している同シリーズだが、今回はパワー半導体(パワー・トランジスター)を5パラレルから6パラレルへと増設。定格出力は260W/8Ω、350W/4Ωへと向上し、「Balanced AAVA」に加え「ANCC」を新たに搭載することで、S/N比および静寂感のさらなる向上を図っている。
筐体についても強化が図られており、高さはE-5000の211mmから221mmへと10mm(1cm)高くなり、重量も33.8kgから38.6kgへと増加している。これらの変更がどのような音響的変化をもたらしたのか、いつものリファレンス機材にて試聴を行った。
筐体・電源部の強化
電源部強化のため、電源トランスをE-5000から2回り大型化(ステレオパワーアンプ「P-7500」と同等サイズを投入)。放熱効果を高める大型ヒートシンクを採用。これにより、高さは10mm(1cm)、奥行きは7cm増加し、質量は38.6kgへとアップ。筐体容積としてはE-5000から約27%大型化されている。
パワーアンプ部
パワー・トランジスターを5パラレルから6パラレル・プッシュプルへと拡張。定格出力は260W/ch(8Ω)、350W/ch(4Ω)を誇り、制動力あふれる締まった低域再生に貢献している。フィルター・コンデンサーには100V / 47,000μFの大容量ケミコンを採用。
プリアンプ部
「Balanced AAVA」のI-V変換アンプ部に「ANCC」を組み合わせた回路構成を採用し、静寂感(SN比)をさらに改善。
出力段・プロテクション回路
ダンピングファクターは1000を達成。プロテクション回路には抵抗の少ないMOSFETスイッチを採用し、低インピーダンス化と高信頼性を実現。
操作系・インターフェース
アルミブロック削り出しの自社開発高剛性ボリューム・センサー機構を搭載。インプット・セレクターにはフラッグシップ・プリアンプ「C-3900」と同等のロジック・リレー制御回路を採用。左右のバランス調整は0.5dB刻みでの精密なコントロールが可能。
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※AAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)
音量調節のために音楽信号を「電圧から電流」へと変換し、重み付けされた複数のV-I(電圧-電流)変換アンプの組み合わせ(電流スイッチの切り替え)によってゲインをコントロールする独自の方式。音楽信号が可変抵抗器を一切通過しないため、インピーダンス変化やノイズの悪影響を受けない。
※BALANCED AAVA
AAVA回路を完全バランス構成(正・負の信号回路を独立処理)とすることで、通常のAAVAに比べノイズレベルをさらに低減させた構成。
※ANCC(Accuphase Noise and distortion Cancelling Circuit)
主アンプ回路で発生する雑音やひずみを副アンプ側で検出し、逆位相で打ち消すことでノイズ性能を極限まで高めるキャンセリング回路。E-6000ではBalanced AAVAのI-V変換段に組み込まれており、実用ボリューム域における静寂性を飛躍的に向上させている。
●SACDプレーヤー:marantz/SACD10
●スピーカー:YAMAHA/NS-5000
ダイナミズムと優しさが同居したサウンドである。低域にはAB級アンプらしい豊かな量感とエネルギッシュな推進力があり、中高域にはまるでA級アンプを思わせる艶やかさと程よい肉付き感が備わっている。女性ボーカルのしっとりとした質感や、ヴァイオリンの弦が奏でる憂いを含んだ響きなど、実に美しい音色を聴かせてくれる。
従来のAB級アンプは、元気な表現だけが前面に出る傾向があり、「ロックやジャズ向き」と評されることが多かったが、今回のE-6000には緻密な美しさと優しさが加わり、ジャンルを問わず幅広く対応できる柔軟さを獲得している。これは、「Balanced AAVA」ボリュームと「ANCC」回路の組み合わせがもたらす圧倒的な高SN比(静寂性)の賜物と言えるだろう。
音場は広大で、その中に音像が自然と溶け込むように浮かび上がる。「溶け込む」と表現すると音の輪郭が甘くなる印象を受けるかもしれないが、実際には音像の輪郭や質感は明瞭であり、そこに適度な厚みが加わっている。ボーカル、ジャズ、クラシックのいずれにおいても曖昧さは一切なく、作曲家や演奏者の意図を過不足なく描き出す。このダイナミズムと耳当たりの良いしなやかさが相まって、聴き手を音楽への深い没入と陶酔の世界へといざなってくれる。
さらに特筆すべきは、小音量時における音響の明瞭さである。ボリュームを絞っても低域の物足りなさを感じさせないため、コンペンセーター(ラウドネス)等の補正機能に頼る必要がない。大音量を出しにくい住環境や夜間の試聴においても、非常に大きな威力を発揮する優れた性能だと実感した。
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1)ヴォーカル:
手嶌葵 Aoi Worksより さよならの夏
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背景の圧倒的な静けさと、際立つ透明感が印象的である。声は程よく肉付けされ、自然な実体感(太さ)を持って描き出される。全体にスピード感と躍動感があり、低域にはしっかりとした重量感が備わっている。音が空間へ自然に溶け込むようで耳に優しく、楽曲の世界へ深く没頭させてくれる。
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2)ジャズ(ヴォーカル・コンボ):
Sinne Eeg Face The Musicより月光のいたずら
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声は非常に明瞭でありながら、耳に刺さるような刺激音は一切なく、豊かな躍動感と迫力を感じさせる。かつてはセパレートアンプ(プリアンプ+パワーアンプ)でなければ得られなかったような充実したサウンドだ。基本にあるのは滑らかで華やかなアキュフェーズ・トーンだが、そこに優しさが加わっているため長時間聴いても全く聴き疲れしない。低域の出方にはAB級らしいダイナミズムがありながら、中高域にはA級アンプを思わせる美しさと艶やかさが宿っている。
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3)ビッグバンド・ジャズ:
Manhattan Jazz Orchestra SING SING SINGよりSING SING SING
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低音の圧倒的な迫力と躍動感に満ち溢れ、ビッグバンドが持つエネルギーを全身で体感できる。音に心地よい厚みがあり、静かなYAMAHAの音がバリバリ鳴る。高いS/N比により、バンドを構成する各楽器の存在感が際立ち、まるで実際のステージの前にいるかのような臨場感が味わえる。聴き疲れせず、音楽の楽しさを純粋に満喫できるビッグバンド・ジャズだ。
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4)クラシック(室内楽):
Beethoven:The Violin Sonatas Sonatas5
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まずヴァイオリンとピアノの鳴り方のバランスが極めて良好であることに気づく。広大な音場の中に、ヴァイオリンの華やかさと、ピアノの艶やかで重厚な低音が響きわたり、楽曲が持つ高揚感がストレートに伝わってくる。ずっと聴き続けていたいという誘惑にかられるサウンドだ。アキュフェーズの純A級アンプのような極限の静寂感とは少し異なるものの、それを補って余りある重厚さと荘厳さ、そして楽器が生み出す生々しい質感がしっかりと伝わってくる。
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5)クラシック(管弦楽):
Mussorgsky 展覧会の絵 よりプロムナード、こびと
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エネルギー感に満ちたクラシックであり、演奏会場の生々しい空気にすっぽりと包み込まれるような感覚を覚える。各楽器の分離が良く、非常に明瞭かつ迫力満点に奏でられる。楽器の質感がリアルで適度な肉付き感があり、「実際のホールではまさにこんな音がしているのではないか」と想像をかき立てられる。高いS/N比に裏打ちされた音抜けの良さが抜群で、静寂が求められる場面ではしっとりと沈み込み、曲が持つ暗く陰鬱な世界観もしっかりと描き出す。全体としてエネルギッシュでありながら、不思議と聴き疲れしない。「たくましさと優しさ」が完璧に同居した表現力と言える。
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6)Diana Krall 『When I Look in Your Eyes』より「When I Look in Your Eyes」
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スケール感が非常に大きく、程よい肉厚感を持った声が、背景の空間へ広がっていく様子は実に迫力に満ちている。録音の優れた音源が持つ情報を余すところなく、極めて明瞭に再現する。ダイアナ・クラールの魅力的な歌声と、伴奏ピアノの存在感が驚くほど生々しく、目の前でプライベートな演奏を聴いているかのような贅沢さを覚える。いつまでも浸っていたくなるような、深い包容力に満ちたサウンドである。
今宵は、Count Basie(カウント・ベイシー)の「April in Paris」を聴きます。ビッグバンド・ジャズの最高峰、カウント・ベイシー楽団による躍動感と流麗なリズム、そしてサド・ジョーンズの端正なトランペット・ソロが光る一曲です。聴いているだけで心が弾むような、実にウキウキとする名演です。
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