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今年1月から始めた「ジャズ愛聴盤を聴く」シリーズの第二回目。Sonus faber(ソナス・ファベール) Olympica Nova III(オリンピカ・ノヴァ3)でじっくり聴きます。オリンピカ・ノヴァ3とノヴァ5は 以前、試聴レポートで取り上げています。ノヴァ3は爽やかで快活な印象を受け、ポピュラーソングや明るいクラシック向けの音作りがしてあり、ノヴァ5は低音が明瞭で重量感があり、ジャズ系の瞬発力やオーケストラの重厚感が聴ける音作りを感じます。なので本来は、Olympica Nova Vで試聴したいのですが、常設はOlympica Nova IIIなのでやむを得ません。Olympica Nova IIIの可能性を信じて、心にどんな印象が沸き上がるかワクワクしながら聴かせていただきました。
Sonus faber/Olympica Nova V :2021年8月(4)試聴レポート頁へ
【1】JUNE CHRISTY (ジューン・クリスティ)/THE INTIMATE MISS CHRISTY
【2】BILL EVANS(ビル・エヴァンス)/PORTRAIT IN JAZZ
【3】LEE MORGAN(リー・モーガン)/CANDY
【4】BOBBY HUTCHERSON(ボビー・ハッチャーソン)/HAPPENINGS
【5】DUKE ELLINGTON(デューク・エリントン)/THE GREAT PARIS CONCERT
【6】KEITH JARRETT(キース・ジャレット)/STILL LIVE
・スピーカー:Sonus faber/Olympica Nova III
・LPプレーヤー:YAMAHA/GT-5000
・カートリッジ:DENON/DL-103R
・プリアンプ:Accuphase/ C-2900
・パワーアンプ:Accuphase/A-75
【1】JUNE CHRISTY/THE INTIMATE MISS CHRISTYよりTIME AFTER TIME
音はあっさりし軽いが、声の表現能力は相当なもので、繊細感があふれている。シリーズ第1回で聴いた「B&W 802/D4」より手軽に音楽を楽しめる。全体のスケール感はそれ程でもない。音像は明確だが、ハスキーさにのる色気のようなものは少ない。
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【2】BILL EVANS/PORTRAIT IN JAZZよりAUTUMN LEAVES STEREO版
ピアノが軽やかで、音色が明るい。ベースのタッチが良く分る。明るく快活で、アルティックが鳴っているよう。ビルエバンスとスコットラファロが醸し出す緊張感が薄くはなるが、音が程々に厚みがあり、実存感に通じる。もう少し音に厚みが欲しい。ビルエバンスの鍵盤にふれるタッチや動き回る指の動きは分かり、ベースの音が生々しい。
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【3】LEE MORGAN/CANDYよりCANDY 、SINCE I FELL FOR YOU
トランペットの音が軽やかだが、それなりに音の厚みがあり、細部の表現も十分でている。ソニークラークの演奏も快活さが出て、スイング感と乗りが良い。LEE MORGANの演奏に向きあう姿勢が伝わってくる。音に非常に切れがある。ブルーノートのジャズの凄みが伝わってくる。繊細さとエネルギー感を併せ持っている。
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【4】 BOBBY HUTCHERSON/HAPPENINGSよりMAIDEN VOYAGE
バイブの響きと、曲の明快さが魅力的。ソースに対して敏感なのが分かる。ハンコックのピアノのタッチが繊細に余韻を残して響く。聴きやすく、クール感が心地よい。金属的な音は良く再現する。
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【5 】DUKE ELLINGTON/THE GREAT PARIS CONCERTよりALL OF ME
ジョニーホッジスのアルトサックスが軽やかに厚みを持って演奏される。良い録音には敏感に表現する。
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【6】 KEITH JARRETT/STILL LIVE よりSOMEDAY MY PRINCE WILL COME
旋律の綺麗さ、ピアノの高域の綺麗さ、ぬけの良さが伝わる。ベースが軽やかで、ベースのソロと、伴奏のピアノの位置関係が良く分る。ドラムとピアノとベースのインタープレイの絡み、やり取りの掛け合いの見事さが良く分る。
Olympica Nova III の明るく快活な音を聴いていると、エンリコ・カルソーの歌うカンツォーネ「VIENI SUL MOUR(海に来たれ)」を思い出す。「船乗りが月明かりの下で眠る娘さんに、目を覚まして船に乗りたまえ」と歌うラブソングである。カルーソのテノールは艶やかな声を張り上げ、スケールの大きな歌唱で魅惑的に歌う。OLYMPICA NOVA III の音は、イタリアの青い空とアマルフィのレモンのようだ。正直言って、ジャズには合わないのではないか、、、と思ったりもする。抑制された情熱の発露や、インタープレイの緊張感、やさぐれた感じや気だるい気分が交錯する音楽には、爽やかで明るすぎる。しかし、BOBBY HUTCHERSON/HAPPENINGSを聴いたときの爽やかなヴィブラフォンとピアノの音は、この演奏を高めていると感じた。人生の暗いところに目を向けないで、もっと楽天的に生きよう、と呼び掛けているよう。次に聴くときは、女性のポピュラーアルバムや、モーツアルトの美しく躍動感に富む音楽にしよう。きっと、イタリアの日差しが差して来るに違いない。
ソナス・ファベールの初代ヒット作であるクレモナはボーカル、木管楽器や弦楽器を聴くと、あたかも、芳醇なワインを味わっているかのような印象を受ける。濃厚でコクのある低音をベースに、匂い立つような中高音により、バイオリンは艶やかで、弓が弦に触れるのを、あたかも眼の前で聴いているように感じる。唯々、音に酔い、演奏に引き込まれ、時間を忘れるひとときである。また、ソナス・ファベールには、OLYMPICA NOVA V、HERITAGE ELECTA AMATOR III、LUMINA 等、それぞれに持ち味のある機種が存在する。聴く人の好みに合わせて、一番ふさわしい製品を提供できる懐の深さを持っている。その中でも私はOlympica Nova Vが好きである。詳しくは、OLYMPICA NOVA Vの試聴レポートを見ていただきたい。
イタリアは芸術分野において、魅惑的な製品を提供する国である。自動車産業(フィアット、フェラーリ) 服飾産業(グッチ、アルマーニ、フェラガモ、ブルガリ) 農業(ワイン、オリーブオイル、チーズ、パスタ等) そして観光業だ。他産業はチョット停滞気味である。フレンチェを舞台にした、辻仁成と江國香織の小説、「冷静と情熱のあいだ」で、美術の女教授が「この街は時間が止まっている。この街には観光業と、美術品の修復以外の仕事は無い」と言い、今のイタリアの現状を言い当てているようである。
BULE NOTE系のエネルギーを浴びるような音を聴くのは段々しんどくなり、リラックスしてアドリブに身をゆだねるようなアルバムが好きになっています。
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【1】JUNE CHRISTY (ジューン・クリスティ)THE INTIMATE MISS CHRISTY
フランクシナトラが歌い、「時を重ねても、君を愛し続けているのは、とっても幸せなことだ」と言う歌詞。チェットベーカーのアンニュイな歌声で流行りましたが、私はジューンクリスティのハスキーでチョットお酒が入っているような歌い方が好きです。
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【2】BILL EVANS(ビル・エヴァンス)PORTRAIT IN JAZZ
演奏開始1分後あたりから始まるEVANSのPIANOとSCOTT LAFAROのBASSとのPLAYが緊張感の中に絶妙のやり取りが行われ、思わず背中がゾクゾクする気がします。長年聴き続けても飽きることはありません。
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【3】LEE MORGAN(リー・モーガン)CANDY
新宿DIG(60年代を象徴するジャズ喫茶)のJBLのスピーカーから流れた曲で、LEE MORGANのチョット不良ぽい演奏が自分のJBLではなかなか再現できず、音作りの目標になったLPです。また、SINCE I FELL FOR YOUのバラードは、淡々と吹いてはいるが、LEE MORGANの天才ぶりが感じられる一曲です。
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【4】BOBBY HUTCHERSON(ボビー・ハッチャーソン)HAPPENINGS
ボビーハチャーソンのクールなヴィブラフォンにハービーハンコックの知的なピアノが絡みます。涼やかな演奏に全てを忘れ没入します。ブルーノートの熱っぽいエネルギッシュな演奏を聴くのに、チョットしんどくなって聴き始めた曲です。
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【5】DUKE ELLINGTON(デューク・エリントン)THE GREAT PARIS CONCERT
ジョニーホッジスのアルトソロとジャズバンドのダイナミックミックな演奏を見事にとらえており、非常に優れた録音だと思います。当日の、ライブの熱っぽさと興奮が伝わってきます。
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【6】KEITH JARRETT(キース・ジャレット)STILL LIVE
1988年ECM録音で、ジャズの舞台がヨーロッパにも移りECMレコードが登場した時、録音はエネルギー感の再現から余韻や静寂感も盛り込んだ繊細なものに変り、JBLも表現を陰影を含み憂いを感ずるものに変えた。そんなECMを代表する演奏者のKEITH JARRETT のSOMEDAY MY PRINCE WILL COMEは、デズニー映画のロマンティックなメロディの変転と、ゲイリーピーコックの繊細に呼応するベースと、ジャックジュジョネットの絶妙にバックアップするドラムのやり取りには、何度聴いても陶酔します。
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