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2021年はB&W 新世代800シリーズの「 802D4」「804D4」を試聴し、その完成度の高さに驚いた。価格はというと802D4で1台200万、804D4でさえ1台100万円もする。もう少し安価で、B&Wの音色を味わえないかと待ち望んでいたところに「700 S3シリーズ」の登場である。ラインナップの価格帯(1台)は30万円から60万円、開発目的は「エレガンス&ハイパフォーマンス」とある。今回はシリーズで一番小型の「707 S3」を試聴し、新しいB&Wの概要を探ってみた。
※B&W 802D4,804D4の音色は2021年10月試聴レポートを参照してください。
・カーボンドームトゥイーター ピンポイントの精度と高精細なディテールの再現。
・コンティニアムコーンとバイオミメティックサスペンションの採用により透明感の高い中域を再現。
・フロントバッフルを曲線にし、ミッドレンジドライバーをバッフルより前に配置。キャビネットによるサウンドへの影響を軽減。
まず、クールな艶やかさと解像力の高い音色を感じ、繊細さや、声や楽器の質感が表現される。その中でピアノの透明度の高い硬質感や、バイオリンの憂いを帯びた弦の擦れる音色を味わうことが出来る。力強い表現には、リファレンス機のマランツCDP,AMPも貢献しているように思う。802D4の密度感のある音像と、歪感とS/N比が改善された生々しい表現とは違ってはいるが、何か共通の物づくりを感ずる。低音の量感は小口径のウーファー故、物足らない感じはあるが、サブウーファーを使用すればさらに完成度を高められる。棚置きでもスタンドに乗せて使っても、それなりの満足感は十分得られるスピーカーではないかと思う。
700 S3シリーズブックシェルフの最小モデルでフィニッシュはモカ色。フロント中央が膨らみをもった緩いカーブを描いている。この施工に技術を要することは予測できるので、それが707S3にも施されているのが素晴らしい。スリムでシンプル。どこか個性的な落ち着き感、品の良さも感じられる。
■リファレンス機材■
・プリメインアンプ:marantz/MODEL 30
・CDプレーヤー:marantz/SACD 30n
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1)JPOP:女性ボーカルと伴奏のチェロの弓引き
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前回試聴したファインオーディオより音が硬質になり、艶やかさや解像度が増す。ボーカルの細やかさや、声の質感は良好に表現する。音が硬い分、チェロの弦を擦る音が感じられて、現実的な音に近い。
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2)JAZZ VOCAL:女性ボーカルと、伴奏のジャズトリオ
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声の表現や質感が生々しい。小型スピーカーだがライブハウスの空間を程々に味わえる。やはり、低音の迫力は、もう少し欲しい。生活空間の中にあって、上質な音楽を楽しむ再生。
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3)JAZZ:ビッグバンドを背景にしたアルトサックスのソロ
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アルトサックスの表現が生々しい。硬質だが、音に程々に厚みがあって、リアリティがある。小型スピーカーだがバランスの良い鳴り方。バックの伴奏の奥行き感までは無理だが、ピアノの音も厚みと躍動感があり、特に不満が無い。曲の展開が分かりやすく、音楽の理解が進む。
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4)CLASSIC PIANO:ピアノソロ、グラモフォンの録音
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ピアノの音が、程よい硬質感があり艶やかで、左右の手の動きが感ぜられる。やはり、解像力が優れている。高域のピアノの響きや余韻が綺麗。BGM的にも、正面から向き合っても聴ける再生音。低域は少し薄いが、音楽の自然さは感じる。
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5) CLASSIC VIOLIN:オーケストラとバイオリンの協奏曲、グラモフォンの録音
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生活空間の中にあって、上質な雰囲気を提供するような音。音は明快で解像度が高い。バイオリンの音が艶やかで、弾むように奏でられる。しかし、オーケストラのスケール感は後退する。バイオリンの憂いに満ちた音色や弦の擦れる音は伝わってくる。クラシック再生の品位を感ずる。
今宵は、山中千尋さんの、「AFTER HOUR’S」を聴きます。このアルバムは、オスカーピーターソンが好んで演奏したスタンダードナンバーを山中千尋が弾きます。彼女は、ニューヨーク在住のジャズピアニストで、日本的な華奢な美人です。軽快なアップテンポな演奏を得意としており、オスカーと共通しています。曲の合間のおしゃべりも楽しいようです。彼女のそんな饒舌なトークのような、「THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU」が私は大好きです。
NHK BS1「ザ・ヒューマン」で取り上げられた世界を代表するピアニスト「アリス 沙良 オット」について綴ります。彼女は、ドイツ人の父と日本人の母との間に生まれ、愛らしくエキゾチックな風貌と、情熱的な演奏から人気を博しました。ところが、2019年4月に多発性硬化症を発し、演奏中止を余儀なくされるのです。多発性硬化症とは、脳からの信号がマヒし手足が動かなくなる難病です。チェロリストとして知られたジャクリーヌ デュプレもこの病気を発し、亡くなっています。同じ経緯かと思いきや、なんと2022年5月、演奏を再開しました。まだ、脊椎に痛みは残るもの、演奏ができる程度には回復したようなのです。
発病前にアリスは、ドイツでは東洋人と言われ、日本では日本語をしゃべると驚かれ「自分はドイツ人なのか日本人なのか」と悩んでいた。しかし、病気とコロナ下の休養を過ごし、演奏を再開した時にアリスは「自分は演奏することで人と結ばれる。ドイツ人とか日本人とかの国籍は関係ない。演奏を素晴らしいと思う感情に、文化、宗教、言語は関係ない」と強く思ったそうです。私も音楽を聴く度に「音楽には国境、文化、人種、様々なことを超える力がある」と彼女と同じことを感じています。今後も、素晴らしい演奏を聴かせてもらいたい。ちなみに、私が試聴用に使う音源は、彼女の、リストの超絶技巧練習曲集 S.139です。
今週は真紅の薔薇が生けてありました。この時期に咲く薔薇は秋バラと言うそうで、夏の過酷な環境を生き抜き、色が鮮やかで濃いのが特徴のようです。この真紅の薔薇を見たとき、おもわずエッセイに書いたアリスへ、いっぱいの花束にして手渡したい気分になりました。
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